FC2ブログ
☆新しい記事は新ブログへ移動。左サイドバーからどうぞ  ★ピアーズ@関西の集まりは下記に記しています。ご参加をお待ちしています   ◆ 教育相談なんでも承ります まずはメールをどうぞ お気兼ねなく ^^ ピアーズ・ベテラン相談員達が丁寧にお答えいたします  ♥ メンバー募集中!(自由参加の有償ボランティア、お手伝いくださいね。プロフィール欄をご覧くださいませ) ♣ 学校訪問/英語保持スクール訪問ライターさん、募集中 できるだけ省力化しています (詳細は2010/02/26記事)

「異文化理解のディスコース」

今日まで関西における帰国子女のための小学校案内を書いてきましたが、今日は最近私が読んだ本をご紹介します。また随時、他の本もご紹介するつもりでおります。


馬渕仁 著 2002年12月発行


本書は著者がモナシュ大学に提出した博士論文に基づいています。昨今、「異文化理解」という言葉をあちこちで見かけますが、それはどういう文脈で発せられているのか、ということを海外子女教育を中心として調べるという内容です。


政策担当者・研究者というディスコース(社会的文脈=コンテクスト、の中での発言)を生産する側の言説を、現地駐在企業人・日本人学校教師・海外子女母親という実際の文化仲介者であるディスコース消費者が、いかに取り入れているかを調べ、従来の国際理解教育に新しい視点をもたらそうとしています。


まず88年と96年に文部省が出した公的文書、86年と97年に多くの研究者の共著として出された国際理解・異文化教育に関する研究書の内容について吟味されます。そこから著者は幾つかのことを見出します。例えば、共生の能力が説かれているが対立が生ずることを想定していない、とか、国際理解の前提として日本文化を理解することと繰り返し説かれているが、そこにおこる葛藤については書かれていない、欧米文化と途上国の文化には優劣が無いという理想的な文化相対主義が述べられている、また文化多元主義を唱えながら国内外国人には同化を求め社会的な力関係については触れていないなど。


次に著者は上記の文書・書籍から導き出したアンケートを、メルボルン日本人学校とクアラルンプル日本人学校の教師・母親・理事(企業人)に送り、その返事をもとにその人たちと個別にインタビューをします。そこから                       ①教員が一番公的なディスコースを受け入れている                    ②企業人は英語をツールと捉えている                            ③母親達は英語さえできれば、という憧れがあるが、熱意や勇気があれば言葉の壁は乗り越えられるとも考えている                                ということが分かります。そして文化については                       ①文化間に優劣は無いという規範的見解が圧倒的多数だが、途上国の文化を見下すべきではないという願望としての見解が多い                        ②日本を単一民族国家とみなす人が多く、日本の文化は独特で特殊だと考える人が多い                                                ③海外を行ったり来たりする人や海外に住みつく人には抵抗を示さないが、根無し草という言葉を使うと、一転、否定的になった。しかし突っ込んで話し合うと見解を変えていった                                                ④日本社会での男女の差異について、企業人は問題ではないと答える人が多かったが、教員と母親はよく分からないと答えた。しかし母親の中には現状変革的な意見を持つ人もいた。                                          以上により、結論としては企業人は異文化問題では現状を鋭く批判していたが、女性の地位向上については消極的、教員は最も規範的言説に強く支配されているが議論によっては呪縛から解き放たれる、母親は最も規範的言説に批判的であるが、男女問題に関しては現状維持派と乗り越えようとする人に分かれた、ということです。


文化仲介者は海外にあって現実への気付きがあるにもかかわらず、コンフリクトの無い規範的な見解を支持する人が多いが、その背後には文化本質主義があるのではないだろうか、と著者は書いています。そういった文化本質主義に則っている限り、文化を脱構築して1つの文化に内在する多様性を顕在化する視点や、多様な文化間の力関係を分析する視点は生まれないだろう、ということです。しかし3者とも、現状に対する疑問や批判を形成する実際の機会があると、意識は変容するようです。ここに規範的言説へのチャレンジ、従来の国際理解教育に対する新しい視点が生まれるのではないか、と著者は述べています。


 



トラックバック
この記事へのトラックバック